病室の夜と、診療室の昼から、コンプレッサーの音を引き算する。
概要
| クライアント | 国内中堅医療機器メーカー(社名非公開) |
| プロジェクト種別 | OEM 向け仕様共同開発 + 試作評価 |
| 期間 | 14 ヶ月(要件定義 2 ヶ月 + 試作 4 ヶ月 + 評価 8 ヶ月) |
| 提供技術 | 完全回転バランス型シリンダー装置の医療機器向けカスタム適用 |
| ターゲット製品 | 移動式酸素濃縮器・歯科用エアコンプレッサー |
クライアントの課題
医療現場では、装置の静かさが患者さんの QoL を左右します。
深夜の病室で動き続ける酸素濃縮器、診療中ずっと稼働する歯科用コンプレッサー、
どちらもピストン式が主流で、振動と騒音は「仕方ないもの」とされてきました。
私たちは数十 dB の低減を目指してダンパー・吸音材・回転数制御で対策してきましたが、限界に近づいていました。
そもそもの動力源を変える、という発想に至ったのがエアーサーフさんとの会話でした。
取り組んだこと
段階 1. 要件定義(2 ヶ月)
- 騒音目標:装置 1m 距離で 40 dB(A) 未満(病室の暗騒音レベル)
- 振動目標:設置面の加速度 0.05 m/s² 未満(精密診療への影響回避)
- サイズ:既存酸素濃縮器のキャビネットに収まる
- 寿命:24 時間 365 日連続稼働で 10 年以上
- 認証:医療機器の電源品質基準への適合
段階 2. カスタム装置設計(4 ヶ月)
- ピストン径とストロークを酸素流量目標(毎分 5L)に合わせて再設計
- 第 2 クランク軸の素材をステンレスに変更(医療環境での腐食耐性)
- バランスウェイトの分布を 3 段階で再調整し、振動レベルを限界まで圧縮
段階 3. 評価試験(8 ヶ月)
試作機を医療機器メーカーの試験室で連続運転。
途中、想定外の現象(部分共振)を発見し、ベース部の構造を 2 度修正。
成果(試作機評価値)
| 指標 | 既存装置 | 新装置 | 改善幅 | 暮らしへの効き方 |
| 騒音レベル (1m 距離) | 52 dB(A) | 38 dB(A) | -14 dB | 「会話の声」レベルから「ささやき声」レベルへ |
| 振動加速度 (設置面) | 0.18 m/s² | 0.04 m/s² | -78% | 精密診療中も気にならないレベル |
| エネルギー消費 | 1.0 | 0.62 | -38% | 病院 1 棟あたり、家庭 ◯◯ 軒分の電気が浮く |
| 連続稼働 温度上昇 | +35°C | +8°C | -77% | 装置の冷却ファンが不要に、寿命も延びる |
14 ヶ月で『深夜の病室で動かしても気にならないレベル』に到達できた。
これは社内で 10 年以上『無理』とされてきた目標値です。
エアーサーフさんは『装置を売る会社』ではなく『動力の物理を一緒に考える会社』。
我々の現場ニーズに合わせて装置の方を再設計してくれた、というのが大きかった。──開発部 部長(許諾を得て要約)
学んだこと
「静かさ」が機能要件になる現場では、消音対策の延長ではなく、振動源そのものを物理的に消すアプローチが、
コスト・寿命・性能のすべてで優位に立てる。
そして、その静けさは、最終的には患者さんの眠りや、診療を受ける方の気持ちのやすらぎに変わっていく。
そこまで届いてはじめて、技術の仕事は完成します。

